弟への手紙。
2002年6月4日-弟へ-
どうか冷静になってくれ。自分の未来を思い浮かべてくれ。このままではいけない。自暴自棄で居続けては駄目だ。気持ちは痛いほど解かる。だがおまえは我が家の一員なのだ。拒むことは出来ても、否定することは出来ない。
親を恨むのは止むを得まい。しかしあの二人がおまえの両親であると言う事実からは目を背けるな。失敗があろうが、誤りがあろうが、息子としておまえを愛し育てて来たのはあのお袋と、親父なのだ。
おれも親を恨んだ時期はあった。絶対服従をやむなくされていた価値観や様々な方法論、生活様式が唯一無二のものでは無いと知ったとき。おれのショックは大きかった。いまでも反感はあるし、反発する時もある。だが、親の存在を肯定することなしには、最終的な自己実現は成し得ないことも今は痛感している。
何かの「せい」にしているうちは、人間は永久に停滞し続けるしかない事に一刻も早く気付き、そして実感して欲しい。希望に満ちた十代を過ごして欲しい。悲観的で、退廃的で、センチメンタルな感情に溺れるのもまた青春であるかもしれない。だが、それがお前の精神世界の総てを支配していては駄目だ。おれの高校時代も灰色に近かったと云わざるを得ないが、それでも夢や情念はあった。おまえはあまりに重要で、あまりに当たり前の事を忘れかけているのだ。己の内に多くの時間と、無数の選択肢が残されていることを思い出してくれ。
栄光を掴むことも、何かに勝利することも、おまえの持つ若さと自由をもってすれば、可能性ゼロになる瞬間など有り得はしないのだ。自分を放棄したとき、心が折れたときにこそ、そのような空虚な時間はやって来るのだぞ。今それをしてしまっては駄目だ。まだ答えは出ていない。当たり前じゃないか。気付いてくれ。
おまえが内包している鬱積していたもの、抑圧していたものの質量を考えれば、親に手を挙げる気持ちも理解は出来る。だが、そんな形で決着をつけたところで何も変わらないし、終わりはしない。おまえをそうさせる要因のなかの、たった一つの因子を消し去ることすら叶わないのだ。
おそらくこの手紙がおまえの目に触れることは無いだろう。だがおれがおまえの兄であり、弟として、一個人としておまえを愛し、かけがえの無い仲間であり続けたいと切望し続けていることは、日々の態度で伝え続けているつもりだ。親も、おれも、おまえを見捨てることなど有り得ないし、できはしない。万が一全世界からお前が批難されようと、最後まで、最後の瞬間でさえも、おれたちはお前の味方でいるのだ。それが家族じゃあないか。
どうか自分を捨てないでくれ。
どうか親を全否定しないでくれ。
どうかおれの声に耳を傾けてくれ。
応援している。一緒に闘っているんだぞ。
倒れるな。まだ倒れるな。おれがこうして生きて踏ん張っているうちは。いやそうじゃなく、親が倒れても、おれが倒れても、おまえだけは立ち続けていてくれ。壁が立ちはだかろうとも、おれたちの屍を重ねてでも跳び越えて行ってくれ。
お前が力尽きたら、お袋も、親父も、おれも、みんなみんな心が折れてしまうのだぞ。共倒れだぞ。それが、家族ってやつじゃあないか・・。
前を睨め。走れなかったら歩け。動けなかったら
眼で進め。心で進め。停まるんじゃない。
いつか、おれの声がおまえに届くことを願って。
兄より。
どうか冷静になってくれ。自分の未来を思い浮かべてくれ。このままではいけない。自暴自棄で居続けては駄目だ。気持ちは痛いほど解かる。だがおまえは我が家の一員なのだ。拒むことは出来ても、否定することは出来ない。
親を恨むのは止むを得まい。しかしあの二人がおまえの両親であると言う事実からは目を背けるな。失敗があろうが、誤りがあろうが、息子としておまえを愛し育てて来たのはあのお袋と、親父なのだ。
おれも親を恨んだ時期はあった。絶対服従をやむなくされていた価値観や様々な方法論、生活様式が唯一無二のものでは無いと知ったとき。おれのショックは大きかった。いまでも反感はあるし、反発する時もある。だが、親の存在を肯定することなしには、最終的な自己実現は成し得ないことも今は痛感している。
何かの「せい」にしているうちは、人間は永久に停滞し続けるしかない事に一刻も早く気付き、そして実感して欲しい。希望に満ちた十代を過ごして欲しい。悲観的で、退廃的で、センチメンタルな感情に溺れるのもまた青春であるかもしれない。だが、それがお前の精神世界の総てを支配していては駄目だ。おれの高校時代も灰色に近かったと云わざるを得ないが、それでも夢や情念はあった。おまえはあまりに重要で、あまりに当たり前の事を忘れかけているのだ。己の内に多くの時間と、無数の選択肢が残されていることを思い出してくれ。
栄光を掴むことも、何かに勝利することも、おまえの持つ若さと自由をもってすれば、可能性ゼロになる瞬間など有り得はしないのだ。自分を放棄したとき、心が折れたときにこそ、そのような空虚な時間はやって来るのだぞ。今それをしてしまっては駄目だ。まだ答えは出ていない。当たり前じゃないか。気付いてくれ。
おまえが内包している鬱積していたもの、抑圧していたものの質量を考えれば、親に手を挙げる気持ちも理解は出来る。だが、そんな形で決着をつけたところで何も変わらないし、終わりはしない。おまえをそうさせる要因のなかの、たった一つの因子を消し去ることすら叶わないのだ。
おそらくこの手紙がおまえの目に触れることは無いだろう。だがおれがおまえの兄であり、弟として、一個人としておまえを愛し、かけがえの無い仲間であり続けたいと切望し続けていることは、日々の態度で伝え続けているつもりだ。親も、おれも、おまえを見捨てることなど有り得ないし、できはしない。万が一全世界からお前が批難されようと、最後まで、最後の瞬間でさえも、おれたちはお前の味方でいるのだ。それが家族じゃあないか。
どうか自分を捨てないでくれ。
どうか親を全否定しないでくれ。
どうかおれの声に耳を傾けてくれ。
応援している。一緒に闘っているんだぞ。
倒れるな。まだ倒れるな。おれがこうして生きて踏ん張っているうちは。いやそうじゃなく、親が倒れても、おれが倒れても、おまえだけは立ち続けていてくれ。壁が立ちはだかろうとも、おれたちの屍を重ねてでも跳び越えて行ってくれ。
お前が力尽きたら、お袋も、親父も、おれも、みんなみんな心が折れてしまうのだぞ。共倒れだぞ。それが、家族ってやつじゃあないか・・。
前を睨め。走れなかったら歩け。動けなかったら
眼で進め。心で進め。停まるんじゃない。
いつか、おれの声がおまえに届くことを願って。
兄より。
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